卒業コンサートは、その人の歩んできた道のりを見せるもの。しかし、ただ並べて見せるだけでは物足りない。懐かしさを持たせつつも、観る者に驚きを与える。これがベストだ。大場はベスト以上のことをやってのけた。

大場の手腕が光ったのはOGを呼ぶことだけではなかった。最後に、大場が谷真理佳とシーソーに乗り、大場の体重の方が重かったら卒業延期というくだりがあった。これは大場にとってはサプライズで、運営が仕掛けた演出だったわけだが、大場はこの対決に勝利した後、青木詩織と相川暖花にシーソー対決をするように命じた。つまり、アドリブをひとつ乗っけてきたのだ。

普通のメンバーなら、サプライズを仕掛けられたことで動揺し、そんなことまでは思いつかないだろうが、大場は違った。最後まで卒コンを自分色に染めてみせた。何が起きても動じないだけの経験はしてきた。大場は卒業後には女優の道を歩いていく。AKB48とSKE48で積んできた経験がどのように生かされるか、それは分からない。芝居に必要とされる感性と今までの経験は別物だからだ。しかし、度胸だけは芝居の世界に行っても負けることはない。そんな確信を持てた卒業コンサートだった。

文●犬飼華