乃木坂46齋藤飛鳥、“嘘偽りのない言葉”でつづったファンへのメッセージ

卒業を発表した乃木坂46齋藤飛鳥
ⒸByakuya Shobo Co.,Ltd 2022

彼女のブログは文学的で小説のような薫りがする。時に美しく、時に人間味にあふれ、読む者の心を惹きつける。ある日、私は彼女自身が一冊の小説であることに気が付いた。

2022年11月4日、齋藤飛鳥が約7カ月ぶりにブログを更新した。更新頻度は決して高くないが、注目すべきはそこに並んだ文章の表現力だ。昔からブログのタイトルが長いことで知られ、2019年3月8日更新のブログで「何時間も何時間もかけて、緻密に計算してこの長さになっているのです。」とつづっている。ブログのタイトルも作品の一つとして捉えている彼女に、紙ジャケットも作品の一つだからこそ音楽はCDで買うという私の考えが似ている気がして、一方的に共感してしまった。

季節を感じさせる冒頭の挨拶文。日常の彩りを添えた文章のあとに自然な流れで、乃木坂46を卒業する旨が書かれていた。ニューシングル発売の告知からわずか5日後の出来事でファンは動揺を隠せない。さらに、年内で活動を終えるというのだから、10秒前のカウントダウンを急に3秒前からされる感覚だ。正直、私自身も動揺を隠せなかったが、ブログを最後まで読んでいくと不思議と安心感に包まれた。それは彼女が想いを文章にして伝えることに優れた才能を持っているからなのだと思った。

その反面、齋藤は言葉を口に出して表現することが苦手な人間だと私は思っている。多くを語ろうとしない性格は乃木坂ファンが一番理解しているであろう。ただ、意外だと感じる人がいるかもしれないが、彼女は日頃からファンを頼りにすることが多い。今回のブログにも「嘘偽りなく、みんなに救われています。」と率直な気持ちを示していた。それに加え、モバイルメールを購読しているファンならば、彼女が普段あまり表に出さない素直な表情と感情を「文面」で感じているはずだ。

卒業発表後に私が何よりもうれしかったのは、31枚目シングル『ここにはないもの』を乃木坂ファンに真っ先に披露してくれたことだ。新曲の初パフォーマンスについて持論ではあるが、特に大切な曲に限っては音楽番組ではなく、ライブや今回の生配信のようにファンに向けて初披露する形が理想だ。Aメロの語りかける歌詞と、11年間の全てを詰め込んだ美しいダンスはまさに彼女を見送るにふさわしい曲だと感じた。小さな背中に大きな翼が描かれる、落ちサビのフォーメーションに涙がこぼれた。乃木坂46には珍しく天気を味方につけ、快晴に恵まれたあの日の夜景を忘れることはないだろう。

また、今回の新曲が16枚目シングル『サヨナラの意味』を彷彿とさせるのは偶然だろうか?齋藤飛鳥を語る上で欠かせない人物が、この曲をセンターで歌い卒業した橋本奈々未の存在だ。お互いに同じ価値観と雰囲気を持っていた二人は姉妹のような関係だった。15枚目シングル『裸足でSummer』で初センターを務めた齋藤は、次期シングルで橋本を見送ることになる。5th year birthday liveの初日に橋本を見送り、2日目からは3期生がバースデーライブに初参加。年少メンバーと言われ続けてきた当時の齋藤が、自身の初センターと橋本の卒業、そして新たな後輩の誕生によって大人へと成長した転機の時期だった。

その後の彼女は常に孤独との闘いだったと思う。グループを背負う存在になったことで、弱さを見せずにいつも心の奥底に仕舞い込んできた。抱え込んだ責任感は、時に私たちの前で大粒の涙となって流れた。言葉を口にすることが不器用な人ほど、その嘘偽りのない言葉が私たちの心に響いて届く。さりげない優しさを持っていることだって私たちは知っている。今となってはグループ内の年長メンバーだが、1期生の輪の中にいるときだけは、いい意味で当時の面影を感じる。大人になっても親の子は子であり、甘えられる場所ではいくらでも甘えていいと思う。「乃木坂46の齋藤飛鳥」は最後の1ページに差しかかった。どんな素敵な結末が待っているのか、これからその先を読むのが楽しみだ。

書店の片隅に乱雑に積み重なった名もなき小説の数々。本は誰かに読まれなければその価値を見いだすことはない。まずはその中から一冊手に取って、タイトルだけでも目を通してみるのはどうだろうか?ヒロインは最初から目立つ場所にいるとは限らないのだから。

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