『砂まみれの名将 野村克也の1140日』著者・加藤弘士氏「勝手な使命感が」

――本書の中では、献身的にサポートするマネージャー・梅沢さんの姿など、野村監督に魅せられていく愛弟子たちが描かれていく。その関係性も面白いです。

加藤弘士 梅沢さんは僕とほぼ同年代で、どうしてこの人はこんなに野村監督のために尽くせるんだろうって不思議だった。アントニオ猪木における、藤原喜明さんのような存在。当時、僕は20 代でしたが、この人だったら命を預けられるというような人はいなかった。今回、改めて話を聞くと、梅沢さんにとって野村監督の就任は、自身の人生をリスタートする千載一遇だったということがわかり、僕も驚いた。どういうわけか、野村監督のシダックスには、ちょっと心に傷を持っているような人が集まっていた。僕は僕で、記者になりたかったのに営業に配属された。エースとして活躍する(後にジャイアンツに入団する)野間口貴彦は大学を中退し暗中模索だった。なにより、野村監督自身、沙知代夫人の脱税スキャンダルによって阪神――、プロ野球界から去らざるをえなかった。

――たしかに、月見草が集まっている。

加藤弘士 「野村再生工場」と言われるように、野村監督は、ヤクルト、阪神時代に数々の選手を再生させてきた。だけど、野村さん自身も、シダックスの3年間で再生した。そして、いろんな人が再生するきっかけになっていた。あの砂まみれのグラウンドを舞台にして。

――しかも、社会人野球という特殊な環境下。本書を読むと、社会人野球のシビアさも伝わってきます。

加藤弘士 特にあの時期は、廃部が相次いでいた時代。会社の経費で野球をしているわけですから、都市対抗野球に出場して、会社の広告塔として機能しなければ、存在自体を否定される。個人でどうにかなるものではありませんから、プロ野球とは違う〝しんどさ〞があるんですよね。チームが強くても、本社の業績が悪化すれば、ある日突然、プレーする環境がなくなる可能性もある。それってものすごく大きな損失なんですね。それぞれのチームにはカラーがあって、たとえばJR東日本だったらピッチャーの育成が上手いとか、日産は厳しい練習に定評があって名選手を輩出するとか。チームの廃部は、その企業にしかない野球のカルチャーが消えてしまうことを意味する。そういうものと隣り合わせでプレーしている選手たちの姿というのが、風景として残っています。

――インタビューの続きは発売中の「BUBKA7月号」で!

取材・文=我妻弘崇

加藤弘士=かとう・ひろし|1974年、茨城県水戸市生まれ。水戸一高、慶應義塾大学を卒業後、97年に報知新聞社入社。03年からアマチュア野球担当として野村シダックスを追いかける。09年にはプロ野球・楽天担当記者として野村氏の監督最終年も取材し、「今季限りで退任」の第一報を打った。その後、アマチュア野球キャップ、巨人や西武などの担当記者、野球デスクを経て、現在はスポーツ報知デジタル編集デスク。スポーツ報知公式YouTube『報知プロ野球チャンネル』のメインMCも務めている。

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