R-指定&KennyDoesが語る、それぞれのRIP SLYME「感」

(左)R-指定×(右)KennyDoes

個性と実力を兼ね備えたラップスキルとトラックセンスがありながらも、これまで語られてこなかったRIP SLYMEについて、R-指定&KennyDoesにインタビューを実施した。

 中学時代の衝動

――今年結成30周年を迎えるRIP SLYMEをテーマにお話を伺えればと思いますが、本編はいずれ公開形式などでできればと思うので、今回はその前哨戦的な感じで進められればと思います。そして「リップの話はKennyに参加してもらわないと始まらない」と、かねがねRくんが話していたこともあり、今回はKenny Doesくんをゲストに迎えてお話できればと。

KennyDoes 大阪で「Rの異常な愛情」をやったときも話したけど『Mステ』で“Rock it!”を披露してるのを見て衝撃を受けて、すぐに『MASTERPIECE』を聴いたのが日本語ラップへの入りです。だから「日本語ラップとの出会い=リップとの出会い」なんですよね。それが2004年。俺にとってリップはかなり自分の原点で、自分の血肉としてありすぎて、客観視ができないグループですね。ライブDVD『ROUGH-CUT FIVE』は、DVDが焼ききれるぐらい見たし、ライブでの動きも含めて、かなり影響を受けてると思う。

R-指定 梅田はリップに影響受けてる奴が多いよな。テークエムもそうやし。

KennyDoes HATCHもかなり好き。

R-指定 俺は小5の時やから、2002、3年ぐらいか。入ってたミニバスの交流試合で韓国に行ったんですよ。そん時に、6年の人が移動のバスの中でずっと“JOINT”のサビを歌ってたんですよね。みんなを盛り上げるために。

KennyDoes 〈マジやばいくらいいいぜ〉って。

R-指定 そうそう。ただ、そん時はリップの歌だとも分からずに、ノリの良い曲やなって感じやったし、帰ってきてCMで流れてて「あ、あの曲や」みたいな。それで中学に入ってヒップホップを聴くようになって、改めて出会ったという感じですね。だから俺も世代的に『MASTERPIECE』ぐらいなんかな、多分。友達にラップを聞かせたりする中で、ケツメイシとかnobodyknows+、Def TechみたいなJ-POPとも繋がる中の一角として、リップがありましたね。

――Kennyくんにとって“Rock it!”の何がそんな衝撃だったの?

KennyDoes それまで親の影響でラップといえばリンプ(・ビズキット)とかリンキン(・パーク)とか、結構ミクスチャーを聞いたんですけど、それに感触が近かったというか、単純にフロウが聴いてて格好良かったと思うんですよね。洋楽っぽいフィーリングがあって、なおかつ歌詞も面白いっていう。

R-指定 そういうのいいよな。ちゃんと音楽として捉えて入るのって。俺らの中学校のやつらがリップ好きやったのは、「歌詞がエロかったから」やで。「“楽園ベイベー”で『オナる』って言うてるよな?」とかでした、俺らの地元は(笑)。PESさんのそのヴァースもそやし、結構SUさんがエロめの歌詞をラップするじゃないですか。それがやっぱ中学生的にはだいぶキテました。しかも、歌という体を取れば、男子たちが固まってそれを大合唱してても、「いや、歌やから!」みたいな(笑)。

――脱法的な(笑)。

R-指定 そうそう。「俺らがエロいんじゃなくて、歌がエロいからしゃあない」みたいな顔ができるっていうのはありましたよね。

KennyDoes なんか目に浮かぶわ。

R-指定 俺がちゃんと聴き始めた時にはもう“One”や“楽園ベイベー”みたいなヒット曲があって、高校生ぐらいで更に”熱帯夜”という特大ヒットがきた感じやったんで、“熱帯夜”がリアルタイムのアンセムみたいな。しかも、MVもバリエロかったんすよ。

――水着が出てくるやつだっけ?

R-指定 そう。水着のお姉さんたちが暗闇の中で踊ってて「エロ!」って。

――リップをなんだと思ってるんだ(笑)。

R-指定 そういうのもあって、「みんなと雷の話はできんけどリップの話はできる」みたいな、そんぐらいの大衆性があったと思う。

KennyDoes 僕は結構真逆で、仲良い2人ぐらいが、俺が勧めて聞き出すみたいなぐらいの感じやったし、「自分だけが知ってるめっちゃかっこいい音楽」って感じでした。地元で流行ってたこともないし。ラップでみんな聴いてたのはORANGE RANGEぐらい。

R-指定 レンジも流行ってたよな。

KennyDoes うん、めっちゃ流行ってた。『MASTERPIECE』と同時期に『musiQ』もリリースされて。

R-指定 ……なんか、あの時の夏の歌、全部エロなかったですか?

――「2004年の夏の曲はみんなエロかった説」。絶対言い過ぎでしょ(笑)。

R-指定 それもあって、レンジの“ロコローション”を、ほんまに思い出すのもおぞましいぐらいの下ネタの替え歌にして歌ってましたね(笑)。あと、学校でいっちゃん可愛い先輩がORANGE RANGEのファンクラブに入ってるという噂があって、それも相まってめっちゃエロいみたいな(笑)。

――妄想にもほどが……。でも確かにわかりやすいし、キャッチーだし、いわゆるゴリゴリのヒップホップとも違うから、みんなも聞きやすいよね。実際、ヒットをしてたわけだから、確実にORANGE RANGEもリップもポピュラリティを得てたわけで。

R-指定 でも、ちゃんと聴き始めると「“楽園ベイベー”のRYO-Zさんはウータン・クランの“Method Man”のフロウを入れてるんや」って気づいたり。最初はPESさんのメロディアスさだったり、華に惹かれたんですけど、自分がラップやっていくようになると、RYO-Z さんのラップのうまさみたいなところにやられることが多くなりましたね。例えばカラオケで歌うと、PESさん、ILMARIさん、SUさんは比較的真似しやすいんだけど、RYO-Zさんは難しいんですよ。それは多分、特徴がリズムやからっていう。

――その人の体感的なリズム感があるというか。

R-指定 それはそれぞれの人が持ってるんですけど、RYO-Zさんは特にそれが強くて、真似してもなかなかRYO-Zさんっぽくできないんですよね。その意味でも、フロウやリズムの乗せ方みたいな部分を、すごい勉強させてもらった感じはあるっすね。

―― RYO-Zさんはすごい変なとこで踏んでたりとか、場所がずれてたりするもんね。

R-指定 だから、とにかく口気持ちいいラップなんですよね、ほんまに。

――個人的には“UNDERLINE No・5”が12インチで出た時の衝撃はいまだに覚えてる。

KennyDoes あれ、ヤバいっすよね。マジで。

――ホントにぶっ飛んだ。打ち込みなんだけど、ネプチューンズやティンバランドとも違う「間」の使い方をしたビートは衝撃だった。TEI TOWAさんとかrei harakamiみたいなエレクトロニカ系に近いアプローチだったし、それをポップな形でやるのはとにかく新鮮で。

R-指定 SUさんもあとから加入ですよね。

――そう。低音のSUさんが入ったことで、ファーサイドからジュラシック5になった感じだったし、そういうLAアンダーグラウンドの影響を感じるカラッとした空気と、リップのポップネスが結合して、それがヒットに繋がったんだと思う。

「メロい」ラップ

R-指定 俺らの世代で多いのは、もともとリップを聴いてて、キングギドラの“公開処刑”が出て「……聞いたらあかんねや」と、何カ月か聞かんくなるみたいな(笑)。

KennyDoes 俺も高校生で自分がラップしだしてから、リップを1回離れたんですよね。好みや求める感じが変わってきたのもあって、DOWN NORTH CAMPにめっちゃハマって、リップは聞かんくなるときがあって。でも意外とリップとDNCって、パーティや日常性をテーマにしてる部分やったり、語尾で長いライムを踏むよりは、もっと聴感的な感じのラップに振っていくみたいな部分で、微妙に共通項はある気はしていて。だから俺自身、リップからの延長線上でDNCに行ったんだと思いますね。JJJ氏がSUさんを呼んだ(“damn feat・SU”)のも、そういう流れやと思うんですよね。

R-指定 そういうことか。

KennyDoes プロダクション的にも、J・ディラに影響を受けてるという部分では近いと思うんですよね。

R-指定 メジャーで売れたヒップホップグループの中でも、濃ゆいヒップホップの素質を持ったまま、カルチャーの匂いを残したままムチャクチャ売れてたのがキック・ザ・カン・クルーとリップやと思うんですけど、キックの方がもっとやんちゃな感じがあったと思うんですよね。

――ストリクトリーなヒップホップへの意識は明らかにキックの方が強いよね。

R-指定 一方でリップはダンスやパーティみたいな洒落っ気があったと思うんですよね。もっと言えば、スケーターとかダンサーみたいな、ヒップホップの身体性みたいなところとかがリップは結構ずっとあるなって。

KennyDoes スケーターが出てくるとこもDNCと通ずるものがあんのかなって。

―― DNCとリップは「個人をリリックで強く押し出さない」のも近いのかなって。特にリップは「俺はこう考えてる」みたいな「個人の歌詞」はほぼないと思う。

KennyDoes 「どういう人か」みたいな、人となりの話って俺も最後の最後にすることが多いんですけど、そういう「そこじゃなくて」みたいなとこに影響を受けてるし、そこが好きやったと思いますね。

R-指定 逆に俺はリリックの構成としては個人を押し出すアーティストに影響を受けてるから、リップからの影響は、フロウの部分が強いのかもなって。あと、梅田のときのように、大人数でラップする時のポジショニングみたいなのは、自然と学んだかも。「こいつがこうやんねやったら、俺こうやろうな」とか。そして、やっぱフックやわ。

KennyDoes そうっすね。

R-指定 フックやサビのメロ感や印象的なワードの込め方、キャッチーさみたいなところは、大いにやっぱ影響受けてますね。

KennyDoes 「ラップメロ」みたいなものは、全部リップに教えてもらいましたよね。いわゆるシンギングラップとはまた違う、ラップの譜割りやけど、そこにメロディが乗るみたいな、「メロいラップ」の旨味が詰まってますよね。“BLUE BE -BOP”、“Dandelion”、 “One”とか、特にそうですよね。

R-指定 「いや、もう歌やん」ってとこまではいかん、ラップの口気持ちよさが残ったメロみたいなんは、リップならではよな。

KennyDoes そのバランス感はマジで凄い。“I・N・G”もそうっすね。

R-指定 あの曲はみんなエグいけど、RYO -Zさんが特にエグい。ちょいモタりながら踏んでって。しかも、ただ単に気持ちいいスキャットかと思いきや、ちゃんとライムとしてめちゃ綺麗やし、長いみたいな。

KennyDoes RYO -Zさんだと、それこそ“UNDERLINE No・5”の「パーセンテージ」と「アドバンテージ」って、「aoaneei」の母音で考えてたら出てけえへんような言葉の連なりですけど、「アドバ」の「アー」と「パーセ」の「パー」も合ってるし、後ろは言わずもがな。そういうのを駆使しながら、リズム作っていくみたいなのが、かなり好きっすね。

R-指定 音楽的な解釈で、リズム、フロウ、気持ちいい方優先みたいな。でも、たまにILMARIさんがめっちゃ韻踏んでくる時あるから。ILMARIさん昔、(ラッパ)我リヤにスカウトされてたっていう逸話もありますから(笑)。

KennyDoes 走馬党員やった可能性があるんや(笑)。

R-指定 俺は“Hot chocolate”がめっちゃ好きで。

KennyDoes わかるわぁ。

R-指定 ラップもトラックも音楽的に超洒落てる、CMタイアップで日本の芸能としっかり真正面で対峙してる、そしてホンマはエロい、みたいな(笑)。リップの強い要素が盛り込まれる曲やと思うんですよね。PESさんの〈ピンク色の雰囲気ってかなり淫靡 見せるから見せなよ君の神秘〉はパンチラインやし、RYO-Zさんの〈Hey You 俺によこしな 皆虎視眈々と包む 銀ガミの下 よこしまなスイーツ〉で、「よこしな」の音の周りをずっと行ったり来たりするみたいな構成、ILMARIさんのメロとか、すごい印象に残ってますね。

聞き手・構成/高木“JET”晋一郎

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