佐久間宣行Pが今のアイドル業界であえて火中の栗を拾ったワケ~吉田豪インタビュー

プロインタビュアー・吉田豪が佐久間宣行プロデューサーに迫る

人間性がバレた上での勝負

――『青春高校』ぐらいのビッグプロジェクトでもあれだけ苦戦したわけだから、そのなかでバラエティ対応できる人とかひとりでやっていける人がいなくなった5人に何ができるかって考えたら、過酷なはずですよね。

佐久間宣行 だし、最初は「自分たちが向いてるかもう一回ちゃんと考えてくれ」って、そりゃ言いますよね。あと、すがる人がいなくて俺にしか頼れなかったのはわかるんですけど、俺もアイドル界においてはスーパープロデューサーでもなんでもないので。正直、バラエティだったらある程度の実績はあるとは思うけど。そこはカメラが止まったあともう一回言いました。それでドキュメントを回し始めて3回目か4回目かな、あの子たちだけで話し合いをしてもらって。あの子たちは強制的に目標を与えて努力したほうがいい結果が生まれるんじゃないかってことで曲の練習(自分たちで選んだ2曲、日向坂46『青春の馬』と阿部真央『変わりたい唄』を歌って踊る)してもらってるあいだに、一緒に『青春高校』やってたなかじまはじめって構成作家と何回か話してたんです。まだちゃんと引き受けるかどうかわからないから俺もなかじまもノーギャラだったんで。YouTubeのディレクターとかには金払ってますけど、そんなにたくさん人を集めて会議できないんで、ノーギャラのふたりで(笑)。ちなみに俺はまだノーギャラで。とりあえずやるって決まるまでは金もらうのやめようと思ったんですよ。

――その後、曲を披露するときにボクも呼ばれたんですけど、ノーギャラを覚悟してたら一応ボクにはギャラのお知らせがきました。

佐久間宣行 はい、それは一応僕から事務所に伝えて。だから現状ノーギャラは僕だけです。それはいいんだけど、何回か話し合って、どういうふうにデビューしてもたぶん意識が低い佐久間頼りの女の子たち5人、大人に任せた5人って思われちゃうから、これは一旦バラしてオーディションするかっていうアイデアを俺が出したんですよ。出したけどその後も、それでもあの5人でデビューさせたほうがいいんじゃないか、そのほうがうまくいかなくても後悔ないんじゃないか、でもまあ好かれないでしょとか話し合いをしてて。豪さんと竹中夏海さんにYouTubeに出てもらったときも、まだ出すか決めてなかったんです、悩んでて。

――あの時点でも映像を撮ってはいるけど、これを出したら彼女たちが嫌われるからどう編集したものか、みたいな状態でしたよね。

佐久間宣行 そう、これ世に出したほうがいいのかな、それとも全部ストーリーを作り直して健気で頑張る子たちのドキュメントを撮り直したほうがいいのかなと思ったんですけど、そんなの個人のSNSでバレちゃうなって。

――当たり前ですよ!

佐久間宣行 この時代、どんなにストーリーを塗り固めても。メジャーアイドルでSNSもさせない、ストーリーは世の中に出るドキュメントだけとかだったら多少は嘘つけるかもしれないけど、いまのご時世で無理だし。SNSで特に何かやってるわけじゃないから、「心底アイドルがやりたくて」とか言っても嘘だろってすぐバレるし、『青春高校』の3年間の素材が世の中に散らばってるから。

――人間性がバレてる(笑)。

佐久間宣行 人間性がバレてるから(笑)。いまからとにかくアイドル志望の子たちで、みたいな嘘はつけないからそれは無理だろ、と。これは豪さんのひと言も残ってて。「佐久間さんいい人だから、このままデビューしちゃうと俺の浪花節になっちゃいますよ」というか。

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