すべての球団は消耗品である「#1 1987年の有藤ロッテ編」byプロ野球死亡遊戯

“ミスターロッテ”と呼ばれた男・有藤通世

笑いと屈辱に満ちた暗黒期にスポットをあてたプロ野球ズンドコ戦記。勝っても、負けても、いつの時代もプロ野球球団はファンに猛スピードで消費されていく。黄金時代、暗黒期、泥沼から抜け出せない低迷期。僕たちはいい時も悪い時もそんな刹那の瞬間に快楽を求めているのかもしれない。

「てめぇらが怒るのが遅すぎるんだ! 10年前にこのぐらいやってみろ! そしたら天下が獲れたんだよ!」

アントニオ猪木は罵声とブーイングと失笑が飛び交うリングで絶叫した。2012年大晦日のイノキボンバイエで、藤田和之対小川直也のメインイベントがレフェリーストップで唐突に終わり、藤田はなにやらブチギレ、小川もしょっぱいマイクで逃げるように去り、両国国技館のリングに取り残されたIGF会長の猪木。最後は強引に「1、2、3、ダーッ!」で締めるが、なんなのコレ……と泣きそうな顔でドン引きしてるゲスト席の鈴木ちなみ嬢。正直に言う。俺はこのIGFの藤田和之対小川直也の映像を今でもよく見返す。一寸先はハプニング。今の洗練され世界進出を狙う新日本プロレスにはなんでもある。だが、ズンドコだけがない。アントニオ猪木の魅力は、ストロングスタイルとズンドコが紙一重の表裏一体で共存していたことだと思う。

そう言えば社会人になりたての頃、週2で通っていた近所のラーメン屋のオヤジが自信満々の口調で、「兄ちゃん、疲れた顔してるな。これ特別サービス」と出してくれたギョウザが死ぬほど不味かった。あんなコンドームみたいな味がするギョウザは後にも先にもあの時だけだ。でも、なぜか妙に元気が出た。本気でやらかしたズンドコの魅力はシューティングを超えたところにある。

プロ野球だってそうだ。V9時代の巨人、黄金期の西武、猛虎打線の阪神と最強チームはよく語られても、屈辱と笑いが溢れる歴代ズンドコチームはほとんど論じられない。死ぬほど弱いけどなんか嫌いになれないあの感情。どん底から抜け出そうとあがけばあがくほど泥沼にハマっちゃう僕たちの失敗。いつの時代もドラマは格好良さではなく、不様さの中に宿る。本連載では、そんな“強さ”よりも“生き様”を見せてくれたズンドコ球団にズームイン!

というわけで、今日はモハメド・アリよりアリ・トウだ。有藤通世。“ミスターロッテ”と呼ばれた男。68年にロッテの前身である東京オリオンズからドラフト1位指名を受け、入団から8年連続20本塁打を記録。77年に打率.329で首位打者にも輝き、ローンで真っ赤なジャガーを買った。リーグを代表する大型三塁手として10度のベストナイン選出。85年には通算2000安打も達成した大打者だ。「オレの体でまともなところは両手の指の第一関節より前の方だけ。あとは頭から足の先まで、みんなひと通りケガをしているよ」なんてかます土佐出身のいごっそうは、身長186センチのド迫力の風貌とガチンコの実力でチームのキングとして君臨する。当時、近鉄の若手だった金村義明は、攻守交代でベンチに戻った有藤に対して、選手やトレーナーが1イニングずつおしぼり持っていって差し出す光景に衝撃を受けたと自著でカミングアウト。オフィスで外回り営業から戻った先輩社員におしぼりどうぞの社内ルール……って令和なら秒で新入社員は逃げちゃうよ!

契約更改の度にボロボロの本拠地・川崎球場の改築をアピールし、「新しい球場を作ってください。作らないなら他球団へ移籍させてください」なんて投手陣のリーダー村田兆治(人呼んで“昭和生まれの明治男”)とフロントに要求して“キャンプ放棄宣言”と騒がれたこともある。そんなキラー有藤が、現役引退した直後の86年オフ、ロッテの監督に電撃就任する。そのシーズン、首位西武に13ゲーム差離されての4位に終わったチーム再建を託されたのだ。11月の秋季キャンプでは、「ここに石コロでもあってイレギュラーしたらワシの責任やから」と真っ先にトンボを手にグラウンドをならす39歳のボスの姿があった。

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中溝康隆=なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『プロ野球新世紀末ブルース 平成プロ野球死亡遊戯』(ちくま文庫)が好評発売中!

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