すべての球団は消耗品である「#5 1989年の上田オリックス編」byプロ野球死亡遊戯

すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯

勝っても、負けても、いつの時代もプロ野球球団はファンに猛スピードで消費されていく。黄金時代、暗黒期、泥沼から抜け出せない低迷期。ファンは、そして僕たちはいい時も悪いときもそんな刹那の瞬間に快楽を求めているのかもしれない。

混パを演出した青い“新興球団”

ミニ四駆のサンダードラゴンJr、金曜ロードショー放送のイタリア映画『サンダー/怒りの復讐』、超闘王サンダーストーム北尾光司。あの頃、確かにサンダーブームが到来していた。

思えば、オリックスの「ブルーサンダー打線」の誕生も電撃的だった。88年10月19日、ロッテ対近鉄のパ・リーグ優勝を左右する伝説のダブルヘッダー“10・19決戦”が行われた日、阪急からオリエント・リースへの球団譲渡が発表された。昭和最後のシーズン、古豪阪急ブレーブスも8年ぶりの勝率4割台で4位に終わり、観客動員は苦戦。その4日前には、球団売却と福岡移転が決まった南海ホークスが、大阪球場でのラストゲームを終えたばかりで、バブル好景気の絶頂でパ老舗2球団の相次ぐ身売り。『週刊ポスト』では「電鉄会社が沿線開発の目玉にと球団を持った“実業の時代”はもう終わり、プロ野球界もサービス業などの新興の第三次産業が幅をきかす“産業の時代”に突入した」とその流れを報じている。

あまりにも突然の阪急消滅に、発表当日の昼に西宮球場の監督室に山田久志とともに呼ばれた“世界の盗塁王”福本豊は、「監督、また冗談言いよる。これ、どっきりカメラでしょ」なんつって天井のカメラを探すほどだった。その譲渡発表から4日後の10月23日、史上最高のサブマリン山田の引退試合に決まっていた西宮でのロッテのダブルヘッダーが、阪急ブレーブス最後の試合となる。試合後セレモニーで上田利治監督は「今日で辞める山田と、残る福本」と言うはずが、「今日で辞める山田、福本」と言い間違い。しゃあない。現役20年目で阪急も消える。わざわざ訂正するのも面倒や。「監督がああ言うたんやから辞めなしゃあないな」とあっさり現役引退を決める福本であった……ってええっ!? 本当に辞めちゃうのかよ! 通算1065盗塁の大選手の去り際としてはあまりに寂しいが、福本の選手兼任でのコーチ就任に反対する上田監督が確信犯的に間違えた説が今となっては濃厚だ。公募した600点の歌詞の中から選び秋元康が手を加えたオリックスブレーブスの新応援歌タイトルは『問題ないね。』って、めちゃくちゃ問題あるよ!

なお、福本自身はのちに『週刊ベースボール』で「俺をコーチ専任にして、カドやんの相手をさせたかったんちゃうかな」と推測。88年シーズン、40歳にして44本塁打を放ち、MVPに輝いた南海の“不惑の大砲”門田博光は、子供の受験もあり九州行きには難色を示していた。ダイエーではなく、関西の球団でプレーしたいというわけだ。当初は近鉄への移籍が確実視されており、トレード相手のひとりとして名前が挙がっていたのはのちに「巨人はロッテより弱い」発言で有名になる加藤哲郎だった。しかし、40代の門田を獲得するために20代の選手3名を交換相手に提示したオリックスが逆転獲得。“中年の星”は一夜にしてワガママ呼ばわりの悪役になるが、新天地でDHだけでなく左翼守備にも就くと張り切るカドやんは、オフに卵と野菜を中心とした食事療法のデンマーク式ダイエットを敢行。まるでツープラトン式バックドロップのようなダイエット法で8キロの減量に成功した背番号78は、春季キャンプのフリー打撃で衰え知らずの殺人スイングを披露。「まるでショーやな。ボールがつぶれとるんとちゃうか」と首脳陣が呆れると、外野フェンスの外では本当に表皮がズル剥けて、中のコルクが巻かれた糸が顔を出す潰れたボールが多数発見された。門田のスイングはガチで硬球を破壊したのである。

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中溝康隆=なかみぞ やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『プロ野球新世紀末ブルース 平成プロ野球死亡遊戯』(ちくま文庫)が好評発売中!

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