乃木坂46・山下美月が作詞したソロ曲『夏桜』に散りばめられた“乃木坂46愛”を読み解く

乃木坂46 35thシングル「チャンスは平等」Type-Aジャケット

メンバー2人目の作詞

4月8日に更新された、あるメンバーのブログにこんな一文が添えられていた。

「是非歌詞にも注目していただきたいなと思います!」

山下美月ブログ『夏桜( ˙꒳​˙ )』より

乃木坂46の35枚目シングル『チャンスは平等』での卒業を発表、同作のセンターを務める山下美月のブログだ。

今作に収録される山下美月ソロ曲『夏桜』。多くのメンバーが卒業時にソロ曲をもらっているが、今回は少し様子が違う。山下美月本人が作詞を行っている。

乃木坂46の楽曲の歌詞はほとんど全て秋元康氏によって書かれており、メンバーで歌詞を書いたのは同じく卒業シングルで『じゃあね』を歌った、1期生白石麻衣以来の2人目である。

(※非公式?ではあるが、松村沙友里が自身を尊敬するメンバーで構成された“さゆりんご軍団”として、卒業コンサートなどで『ぐんぐん軍団』や『働き方改革』などを披露している)

山下はブログにて「凝った表現など選ばずに真っ直ぐに繋げたので」と述べており、本人が込めた以上の解説になるかもしれないが、約8年間、乃木坂46としてグループの中でも、外でも活躍してきた山下美月の想いを読み解いてみた。

美しい月が歩んだ道

君が寂しそうに微笑む
もう少し咲いていてほしかったと

桜の蕾 花開く時 待っていてくれた
いくつもの冬 共に乗り越えた 大事な人

夏の桜 忘れないで
ありがとう ありがとう もう行くよ
夏の桜 思い出して
美しい月が照らす白道
次の季節まで 咲いていてほしい 願っていた

乃木坂46『夏桜』より

1番の歌詞からは「冬」、「月」、「白道」に注目してみた。

「冬」には“我慢する”や“乗り越えるもの”など、マイナスのイメージが持たれることが多い。しかし、「冬」と「月」を組み合わせると印象が変わって見える。冬の月を思い浮かべてみてほしい、普段より高いところにあるイメージがないだろうか? これは冬の月の通り道が太陽の夏の通り道と同じ位置を通っており、冬至になると満月の南中高度は高くなる。(これはネット上に詳細があるので確認していただきたいが)つまるところ、月は冬になると高い位置を通り、澄んだ空気も相まって、冬の月は明るく高い位置に現れる。

今回、卒業ソロ曲の収録が確定した際に、ある一説がXを中心に流れてきた。秋元氏初の自選歌詞集から「そうそう、この歌詞集のタイトル『こんなに美しい月の夜を君は知らない』は……そのうち、何かの歌詞になると思います。」この一説から「ソロ曲の歌詞に含まれるのでは!?」、「美月の名前が入っている」とXなどで盛り上がったが、『夏桜』は山下美月作詞となり、歌詞に含まれることはなかった。しかし、私はこの一説が垣間見えた気がする。

また、上述した月の通り道には正式な名前があり「白道」と呼ばれる。歌詞からは桜の花びらが散り、道を埋め、月が照らして白く見える描写に思えるが、山下美月が乃木坂46として歩んだ道のりを月の通り道とかけているのかもしれない。

“我慢”や“乗り越えるもの”とされる冬の季節。振り返ると彼女がセンターを務めた『僕は僕を好きになる』はコロナ禍での初リリース楽曲(※配信のみの作品以外で)、『人は夢を二度見る』は1期生として多くの楽曲でセンターを受け継ぎ、担ってきた齋藤飛鳥卒業後のシングルだった。グループにとって苦しい時、乗り越えた先にあるものを掴みに行く節目で彼女は先頭に立っていた。ファンに向けて“ありがとう”と思いを伝えてくれた彼女だったが、感謝すべきなのは乃木坂46ファン側であろう。

風も光も絶望も

全て包み込みたかった
風も 光も 絶望も

ただ桜を見上げるだけじゃ 何も進めない
川を流れていく花びらたち 眺めながら

花が散って 明日へ続く
何より大切なこの坂に
花の香り 残さないで
時々思い出すぐらいでいい
夏になればほら 葉桜の空 涙の色

乃木坂46『夏桜』

2番の歌詞冒頭は「全て包み込みたかった風も 光も 絶望も」から始まる。この3つの単語を並べた時、聴いた人は一瞬、違和感を覚えるかもしれない。「“絶望”が浮いて見える」「風や光を包む?」と思うかもしれないが、多くのファンはすぐに気付くと思う。これら3つの単語は各期の最初の期別楽曲、3期生の『三番目の風』、4期生の『四番目の光』、5期生の『絶望の一秒前』が元ネタだろう。これらはXでも話題になった。

彼女がブログで「2番はメンバーに向けて想いを込めて言葉を紡いだ」と明記している。アイドルとして咲いていた山下がいなくなっても、乃木坂46はまだまだ咲き続けている。これからの乃木坂46に自分の面影=花の香りを残さないで「時々思い出してくれればいい」と伝えている。

この「時々思い出してくれればいい」は乃木坂46初代キャプテンの1期生・桜井玲香卒業ソロ曲『時々 思い出してください』から来ているだろう。桜井玲香×山下美月といえば「乃木坂工事中」でのバレンタイン企画を思い出す。3期生から先輩にプレゼントする企画で、山下は桜井にプレゼントを渡し、思いを伝えていた。一方の桜井はライブで山下の名前「みづき」を「みつき」と呼び間違えるなど、桜井のポンコツ具合が取り上げられていた。山下と濃い関係性のある先輩といえば「若様軍団」の1期生・若月佑美、齋藤飛鳥が思い浮かぶが、桜井との関係性も垣間見えていた。

余談だが、バレンタイン企画での先輩は立候補制であり、若月は立候補してフラれ、立候補してなかった桜井にプレゼントが渡された。この時渡したプレゼントは「生ウニ一箱」であり、「乃木坂工事中」(2024年4月7日放送回)で山下が欲しがったご褒美は「箱ウニ」だった。(※山下はご褒美を手に入れるために、白塗りになっている)

ブログにはMVのオマージュに関しても言及されていた。序盤は花屋さんで働いている山下の元に「乃木坂の最終オーディション~」とメッセージが届く。これは西野七瀬卒業シングル『帰り道は遠回りしたくなる』で西野のもとに「最終審査通過~」のメールが届くシーンのオマージュだろう。中盤、2番の冒頭ではスケジュール帳にびっしりと予定が詰めこまれている。これは山下を慕う4期生・賀喜遥香のセンター楽曲『好きというのはロックだぜ!』から。終盤では山下の表題曲初センター『僕は僕を好きになる』のMVのように撮影からの場面展開が起きる流れがあり、『夏桜』では満月をバックに山下がかぐや姫のような装いでの撮影が終了しその後ラスサビへの流れとなっている。

桜に込められた思い

最後に、タイトルである『夏桜』に関して。MVの最後に花瓶に生けられていた桜とは違う、亜低木の花で品種名に「ナツザクラ」を含む「ニチニチソウ」という花を紹介したい。開花時期は5月~で山下卒業タイミングと重なる。このニチニチソウの花言葉は「友情よ永遠に」。グループ加入から4年以上経過したタイミングで誰一人欠けることがなく、「奇跡の期」と呼ばれた乃木坂46の3期生。2人目となる3期生からの卒業生になるが、彼女たちの友情は永遠だと込められているかもしれない。

2nd写真集が4月23日(火)に発売予定の山下美月。彼女の1st写真集のロケ地フランス・パリにおける桜の花言葉は「私を忘れないで」。歌詞や花言葉に込められた「忘れないで」は彼女がファンに向けて送ったメッセージだが、ファン、そして乃木坂46メンバーにとって山下は「忘れられない人」になっている。

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