【BUBKA10月号】なんてったってキヨハラ第13回「土地ころがしよりバット投げ」

なんてったってキヨハラ第13回「土地ころがしよりバット投げ」
文/中溝康隆(プロ野球死亡遊戯)

西田ひかる、井森美幸、ダンプ松本、CHA‐CHA、サンコンさん、カケフ君。

1989年(平成元年)、日本テレビ系『木曜スペシャル』のMr.マリック特番に集結したゲスト陣は目の前で披露される“超魔術”に圧倒されていた。「ガムじゃない、キャンディじゃない、これは明治の果汁グミ」とハタチの石田ゆり子が笑ってみせるファジーなCMを挟みつつ、視聴率は22%超え。翌日の教室では「きてます、きてますっ!」とベタなモノマネが流行り、雑誌『明星』の「絶対!サラダ組アイドル仲良し学級」という名物コーナーに藤谷美紀や深津絵里に挟まれ、唐突にヘンなおじさんのマリック登場。

『中央公論』では中沢新一による「マリックする世界」がガチで論じられる社会現象に。このブームはプロ野球界も直撃し、各球団のファンイベントではお手軽なスプーン曲げに挑戦する企画も続出。

そうは言っても簡単には……と思いきや、ひとりだけニヤリと笑い、曲がったスプーンを高々と掲げたのは巨人の桑田真澄だった。

赤字の米国、高失業率の欧州を尻目にこんな異常な好景気は怒りを買うから、あまり大きな声で言わない方がいいという冗談のようなネーミング“気配り景気”元年。

89年初夏、KKコンビはそれぞれ動乱の夏を迎えていた。初のホームランキングを狙い絶好調で開幕したはずの清原和博は打撃不振に見舞われたあげく、7月4日の守備練習中に、突然の雨で西武球場の人工芝が滑り左膝をひねってしまう。

10.5ゲームの大差をつけられていた首位オリックスとの直接対決だったが、翌日の試合途中に交代。1年目から続く連続試合出場は代打で継続されたが、12日の近鉄戦前、森監督に3試合ぶりのスタメンを直訴。「3番DH」で出場した背番号3は、第3打席で藤井寺球場の左翼席場外へ約1カ月ぶりの特大第15号アーチを放ってみせる。世界でいちばん熱い夏を生きる岸和田男の逆襲だ。

8月3日のダイエー戦、山内孝徳から左翼席へサヨナラ19号を放ち、三塁を回ると加速して秋山幸二ばりのバック転披露かとスタンドを盛り上げといて、唐突にホームベースに足からスライディング。

ズッコケる同僚を見渡し、キヨマーは「俺、バック転できないし」とニンマリ。この年、3割30本30盗塁のトリプルスリーを達成する全盛期の秋山、6月に途中入団した“カリブの怪人”デストラーデの爆発と“AKD砲”を軸にレオ打線は復調。やがてオリックス、近鉄との三つ巴のV争いへと持ち込む。

――記事の続きは絶賛発売中の「BUBKA10月号」にて!

なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)
1979年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。主な著書に『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『ボス、俺を使ってくれないか?』(白泉社)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)、『令和の巨人軍』『現役引退―プロ野球名選手「最後の1年」』(新潮新書)などがある。

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