キムヤスヒロ(プロデューサー)×BIG-D(バックDJ)、リリスクが再定義した「アイドルラップ像」

lyrical school最新アルバム『L.S.』

大きな変化を迎える「リリスクの現在」について、運営/プロデュース側はどう感じているのか。2010年の結成からプロデューサーとしてユニットを手掛けるキムヤスヒロと、ライブではDJも務めるBIG-Dこと浅野氏に、その胸中を訊いた。

引き留めなかった

――まずメンバーの5人中、4人が卒業することについて、プロデューサー陣はどう感じましたか?

キム メンバーそれぞれから例えば「リリスクとは別にこういう活動をしたい」とか「自分一人で挑戦してみたいことがある」っていう話は受けていて、卒業の理由や方向性はバラバラなんだけど、その話があったのはタイミングとして近かったんですよね。結果としては4人が卒業して、minanがリリスクのメンバーとして継続することになりましたが、正直に言えば、状況によってはリリスク自体を解散させるっていう考え方もあって。

――そこまで動いてたんですね。

キム ただ僕の中には次のアイデアがありましたし、minanが最終的にグループに残ることを決めてくれたので、「L.S.」のリリースツアーと日比谷野音でのライブをもって、現体制終了という形にしようと。野音は何年も応募し続けてやっと当選した会場だったし、元々はリリスクのステップアップのために用意したステージだったので、今回こういう形になってしまって正直残念だなと思う反面、現体制での最後のライブが目標にしていた会場でできることになって良かったなとも思います。

――メンバーが卒業を考えるタイミングが近かったのには理由ありますか?

キム 事務所の契約更新のタイミングですね。それもそれぞれの気持ちだから一概には言えないけど、やっぱりコロナは大きかったのかなと想像しています。コロナでいろんなことが動かなくなり、ライブの動員も難しくなっていって、そこで「そろそろ頭打ちなんじゃないか」ってメンバーが感じた部分はあると思ってて。もちろん動員の数字が横這いだったことが、メンバーのモチベーションに影響するのは理解できるんですが、数は増えていなくても来ている人は入れ替わっていたんで、正直、僕個人としてはあまり重要視してなかったんですよね。レーベル、事務所の人間も皆、少なくとも現状で頭打ちとは思ってなかったはずです。

――プロデュース側のモチベーションは変わってなかった、と。

キム アルバム自体、現体制の最後を反映して「L.S.」というセルフタイトルにした訳では全くなかった。レーベルともその先に続くような案や企画も立てていたし。同時に、お話を頂く案件ももう一段階大きくなっていて、ビクターさんと一緒に作ってきたブランディングも花開いてきたなっていう手応えもあったり……まあ、これも完全に僕の至らなかった部分です。こればっかりはプロデュース側の意思だけではどうにもならないんで。

――そこで「引き留める」ということはしなかったんですか?

キム 「こう思うよ」「いまはこういうタイミングだよ」という話はしたんですけど、「引き留める」ということは一切してないですね。

浅野 前体制でメンバー3人が卒業して体制がガラッと変わったときは、残るhimeとminanとは色んな話し合いはしたんですが、今回はそれもないですね。引き留めると関係性や関係値が変わりそうだなって。

キム プロデュースする側とされる側の関係性って、すごくグロテスクな面もあると思うんです。10年以上リリスクのプロデュースをやっていて、自分たちの中にもそれは感じることだし。どれだけ運営側とメンバー側の関係の中にグロさを無くせるかは、ここ数年になってよく考えていることで。それはアイドルを守るという話じゃなく、気持ち良く仕事をする上でごくごく自然な状態を維持するイメージというか。だから今後は「やっぱり戻りま~す」ぐらいのポップな感じで出入り出来るような、それぐらいの環境を作りたいなって。

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