石破茂氏『異論正論』理解して、説明する、その努力だけはしていかなきゃいけない

憲法改正主張の真意

――そういった弾力性に富んだ伝え方のできる石破さんが、『異論正論』では、“そもそも論”を後回しにするのは、もうやめようとストレートに訴えている。石破さんは、1996年の時点で、このままでは「国(日本)は滅びる」と喝破しています。

石破茂 むしろ、後退してないかしらね。真っ当な議論が行われていない。日本人は、問題を先送りにするのが大好きすぎやしませんかね。昭和の時代は、人口が増えて、経済も伸びた。なんとなく予定調和的に問題を先送りにしていたところがありましたが、平成以降は、人口は減る、経済も伸びない、安全保障環境も変わってしまった。となると、先送りすれば、当然、先送りされたことでツケが回ってくる若い世代が、何倍もの負担を背負うことになる。人口増加、経済発展、安全保障の安定という三つが成り立っていたから先送りができていただけの話。成立しなくなった今、いつまで先送りにするの?そういう問題意識なんですね。

――中でも、緊急事態条項(ならびに私権の制限)と、自衛隊法の見直し……憲法改正に関しては、石破さんが繰り返し主張してきたことです。しかし、この点も先送りされている感が否めません。

石破茂 私は、憲法の議論は、安全保障の議論の土台だと思っているんですね。土台がきちんとしていない場所に、立派な家を建ててもすぐに倒壊してしまう。砂上の楼閣のようなもの。我々自民党は、民主党政権時代、3年3か月の間、野党でした。その間は本当に真っ当によく議論した。私は、あのとき下野したのは、政策が否定されたわけではなく、自民党の立ち振る舞いが否定された結果だったと思っていました。だからこそ、与党としての仕事から離れて、深い反省のもとに自民党とは何か、安全保障とは何か、財政政策いかにあるべきか――、今度こそきちんとした憲法改正草案を作ろうという雰囲気が、あのときは渦巻いていた。谷垣(禎一)さんが総裁で、私は憲法9条の担当だった。憲法9条は、“日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない”とある。そもそもこれって何だろう?と。国権の発動たる戦争って何ですか? 交戦権って何ですか?とかね。一応、私も法律学科出身ですけど、憲法学の時間にきちんと習った覚えがない。憲法ゼミの人は習ったかもしれないけど、私は民法ゼミだったからね。そういったそもそも論を、野党のときに徹底的に議論した。それが、平成24年自民党の憲法改正草案になった。

――ですが、その後、意見の相違から故・安倍晋三元首相と袂をわかつことになります。

石破茂 日本には、約50の基本法案があるんですよね。がん対策基本法、水産基本法、教育基本法という具合に。ところが、安全保障の基本法はない。それだけでも驚くべきこと。憲法改正は、衆参総議員の3分の2の賛成を得れば、国民投票にかけることができる。そして、国民投票の結果、過半数を得れば改正することができる。私はそれほどハードルが高いとは思っていないんです。だが、安倍さんは集団的自衛権の行使を憲法上限定的に考えられた。一方私は、憲法上で行使に制限を設けるのではなく、安全保障基本法の中で行使に制限を設けるべきと主張した。

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取材・文=我妻弘崇

石破茂=いしば・しげる|1957年生まれ、鳥取県出身。慶應義塾大学法学部卒。1986年衆議院議員に全国最年少で初当選。防衛大臣、農林水産大臣、地方創生・国家戦略特別区域担当大臣などを歴任。著書に『国防』『国難』『日本人のための「集団的自衛権」入門』『日本列島創生論』など。

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