西武ライオンズの清原和博を知ってるか?【第9回】

PL学園の主砲として甲子園を沸かせた清原和博。1985年の運命のドラフトによって盟友桑田真澄は巨人に入団、憧れのチームに裏切られ忸怩たる思いを抱えながらも、18歳の清原は西武ライオンズ入りを決断。彼はここで野球キャリアの中でも最も華々しい活躍をすることになる。そんな彼がひとりの野球人として輝いていた西武ライオンズ時代約10年間を描いた『キヨハラに会いたくて 限りなく透明に近いライオンズブルー』(7月21日発売/白夜書房)よりお届けする。

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1986年③
ゴールデンルーキー

「パットリくん」

いきなり勘違いしないで欲しいが、これは俺の行きつけの黒木香にちょっと似た熟女が経営するアカスリエステの店名ではない。1986(昭和61)年7月1日に発売された富士フイルムのレンズ付きフィルム「写ルンです」のネーミング候補である。文具店や駅の売店でも気軽に買えて使えるフィルムにカメラ機能を付け、24枚撮りで1380円。「写ルンです」はロイター通信でも大きく取り上げられるヒット商品となり、ニッポンで写真をより身近なものにした。

当時は写真週刊誌が5誌も乱立する戦国時代。加熱するいきすぎた取材攻勢とスクープ合戦の日々。ビートたけしが軍団を伴いフライデー編集部を襲撃したのも86年のことだ。当然、時代を象徴するガラスの十代KKコンビも写真週刊誌に狙われた。美女との早朝デートを撮られた清原和博、同時期に東北遠征で先輩選手に連れて行かれた夜の仙台で追いかける週刊誌のカメラマンと揉め、ひと騒動起こした桑田真澄。だが、彼らはそんなことで萎縮するタマじゃない。

5月に男性用ファッション誌『メンズノンノ』が創刊。初めてモミアゲまで剃り落とすテクノカットに挑戦した西武の背番号3は、6月1日の南海戦で門田博光の強烈なゴロを股間で止め、這いながらベースタッチした直後の打席で右翼席へ7号アーチを放つ。ここでお茶目な新人類は、なんと三塁ベースを回ったところで自身のキンタマ付近を押さえて走り、ベンチとファンの爆笑をさらった。「腫れて、大きくなってよかったろう」なんつって先輩から冷やかされ、キヨマーは思わずニヤリ。ツイてるね、ノッてるね。巨人のエースナンバーを背負う18歳も、ファミコンソフト『ドラゴンクエスト』発売直前の5月25日に中日戦でリリーフとしてプロデビュー。6月5日、後楽園初先発となる阪神戦は異例の18時から地上波テレビ中継が敢行された注目の一戦だったが、桑田はあわや完封の快投でプロ初勝利を初完投で飾る。厳しい内角攻めで相手主力打者の岡田彰布を怒らせてしまうが、試合後インタビューで「内角球を投げちゃいかんという法律でもあるんですか」なんて言い放つ強心臓ぶりを見せつけた。

「無人島に流れ着いたと思ったら仲間がいた」とコメントしたのは、6月12日大阪城ホールで藤波辰爾と両者KOドローの死闘を繰り広げた前田日明だが、KKコンビは宿命のライバルであると同時にプロの世界でともに戦う同期の盟友でもあった。ふたりで雑誌『Number』の表紙を飾り、80年代を疾走する炎の友情を周囲は煽る。清原は桑田の週刊誌報道を心配して本人に電話をかけていたが、グラウンド上ではあまりに記者から桑田デビューについて聞かれるので、憮然とした表情でコメントを断ったこともある。カメラマンが誤って大事にしているバットを蹴飛ばした際は、「なにするんですか!」と珍しく声を荒げたという。気はやさしくて力持ち。一方で真っすぐで繊細すぎる一面も併せ持つ。これが異常な注目度の巨人や阪神へ入団していたら、野球以前にマスコミとの戦いに疲弊してしまったかもしれない。今思えば、所沢の雄大な自然に囲まれた西武ライオンズというチーム環境と、自由奔放なパ・リーグの空気がキヨマーには合った。

85年と86年に三冠王を獲得したオレ流・落合博満を打撃の師匠と心酔し、ロッテ戦に限り攻守交代の際に一塁ベース付近の土部分を念入りにスパイクの底でならしてからベンチに戻る。文化放送のライオンズナイター担当アナウンサー中川充四郎氏がその理由を聞くと「落合さんがイレギュラーで怪我しないように」と思っての行動だった。高卒新人の本塁打記録27本を持つ豊田泰光氏から『週刊現代』のインタビューで、「オレの記録を破ったら、お前の好きなことを、なんでもさせてやる」ともちかけられると、「なんでもですね、なんでも」なんて笑い、もし自分が負けたら「寮へ招待しますよ。寮のメシをボクがおごります。豊田さんも、後学のために一度食ってみたらどうですか」と親子ほど歳が離れた強面の先輩にも物怖じせずに絡んでいく。当然、こういう十代は先輩たちから可愛がられる。

遠征先では正捕手・伊東勤の部屋を訪ねてプロの配球について質問攻め。一塁のポジションを争うベテラン片平晋作を“おとうちゃん”なんて冗談交じりに呼び、怒られるどころか「おまえな、早よゴンゴン打って、俺をDHにまわせや」と叱咤激励される。ホームランと打点でトップを走る4番の秋山幸二は、「ま、尻を叩かれる感じですよ。アイツの方から、今日打ちますからね、と言ってくる。それじゃあ、こっちも負けられんいう気持ちになりますもんね」と時に5番を打つルーキーに刺激を受ける。

…つづく

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