すべての球団は消耗品である「#8 1992年の土橋日本ハム編」byプロ野球死亡遊戯

すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯

勝っても、負けても、いつの時代もプロ野球球団はファンに猛スピードで消費されていく。黄金時代、暗黒期、泥沼から抜け出せない低迷期。ファンは、そして僕たちはいい時も悪いときもそんな刹那の瞬間に快楽を求めているのかもしれない。

“土橋の兄ちゃん”現場復帰

大相撲“どすこい”シリーズ、若貴人気にがぶり寄り!!

「L.L BROTHERS ダンス甲子園ニューヨーク大会」を特集する雑誌『エルティーン』91年11月号の表紙には、若貴フィーバーに思いっきり便乗した見出しが躍っている。この平成3年の春場所、東前頭13枚目の貴花田は破竹の11連勝で、12日目の小錦戦は怒涛の瞬間テレビ視聴率52.8%を記録。五月場所の初日には、大横綱・千代の富士を寄り切り、18歳9カ月の史上最年少金星を挙げた。九月場所でも、お兄ちゃんの若花田が旭富士から初金星。「親父は相撲好きでね。身体も大きかったし、とにかく強かった。だから、ボクも物心ついた時から大の相撲ファン。うん、あのまま行けば力士になっていたかもしれん。いや冗談じゃなくて」なんて唐突に謎の体力自慢をかます元近鉄のビッグワンこと鈴木啓示……は置いといて、未曾有の大相撲ブームは、若貴兄弟がオールスター戦の始球式を務めたプロ野球にも直撃する。

91年秋に日本ハムの新監督に就任した土橋正幸は、「元気、ヤル気、負けん気」を合い言葉に平成球界に宣戦布告。「相撲の世界は、日常生活から実力主義。いまのプロ野球の選手は恵まれ過ぎで、甘えにつながっている」と3年連続Bクラスのチームに喝を入れ、コーチや若手選手を玉ノ井部屋の稽古場見学へ派遣した。秋季キャンプではベンチと守備位置の往復は高校野球並みの全力疾走を義務づけ、練習の最後に全員で相撲のシコ踏みを取り入れた。みんなでシコふんじゃった……っていきなり香ばしいズンドコ臭を漂わせつつ、土橋日本ハムは船出する。

当時、東京ドームを本拠地にしていた日本ハムファイターズを率いる江戸っ子監督は、浅草生まれの浅草育ち、悪そうなヤツはだいたい友達。実家の魚屋を手伝いながら、浅草ロック座の草野球チームで投げ、21歳のとき「面白そうだな」と長靴を履いたまま東映フライヤーズの入団テストへ向かう異端の野球人生を歩んだ。20勝以上を5度、61年には30勝を挙げ、無類の喧嘩の強さでも知られた駒沢の暴れん坊右腕は、あの張本勲が死にたいくらいに憧れた“土橋の兄ちゃん”でもある。

86年のヤクルト監督以来、6年ぶりの現場復帰だったが、56歳になってもストロングスタイルを崩さず、92年正月明けのコーチ会議で「闘志なき者に勝利なし」と吼え、「あれは見てても、みっともない。たいしたことなければ使わせない」なんて死球時の痛み止めコールドスプレーの使用をバッサリ。戦う集団への意識改革は順調かと思いきや、鴨川キャンプ初日に大雪に見舞われ、翌2日は震度5の地震。

沖縄に移動しての二次キャンプも、瞬間最大20メートルの嵐でエアテントが破壊される哀しみのアクシデントラッシュ。出だしから悪い予感しかしない新シーズン、3月1日のオリックスとのオープン戦で初勝利を挙げ、「負けるよりはいいだろう」と上機嫌だった土橋監督だが、13日のダイエー戦で完封負けを喫すると怒りを露わにベンチから飛び出し、バスに乗り込もうとするも25年ぶりの平和台球場で出口を間違え、「誰も教えてくれないものな」とマジ絶望。選手会長の白井一幸が故障離脱するさらなる逆風の中、開幕戦でベテラン柴田保光が王者西武相手に意地の完投勝利を飾り、ウイニングボールを差し出された土橋監督は「いいのか? 記念にもらっとくよ。家に大切にしまっておく」と大喜び。

問題児と噂されていた大リーグ通算148本塁打の新助っ人マーシャルも工藤公康から初打席初アーチと結果を残し、上々のスタートを切ったチームは4月18日のウインタースのサヨナラ弾から4連勝を飾り、6年ぶりの単独首位に立つ。若手も積極的に起用し、ルーキーの片岡篤史をスタメン三塁に固定。4年目の鈴木慶裕は4月終了時に打率.455と大ブレイクを果たす。「組織に負けないというか、縛られないところが格好いいですよ。あの生きざまにはあこがれちゃいますよね」と尊敬するスポーツマンに前田日明の名前をあげる格闘プロレス大好きの東京生まれのトップバッターは、まさに土橋暴れん坊野球の申し子。イチロー登場前のパ・リーグで、噂の鈴木と言えば“ハムのヨシヒロ”だった。

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中溝 康隆=なかみぞ・やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『プロ野球新世紀末ブルース 平成プロ野球死亡遊戯』(ちくま文庫)が好評発売中!

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