NZA(永野)×D.O、楽しむという鎖に繋がれた異端児が再び交わる、白昼堂々130分!

「BUBKA9月号」に登場している永野、D.O
撮影=菊池茂夫
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先日、YouTubeの動画メディア『McGuffin』で対談を行った芸人・永野とラッパー・D.O。本誌的には、両者と交流のあるプロインタビュアー・吉田豪に話を聞いてもらいたい! と、向かった先はジャパニーズヒップホップの聖地・9SARI CAFE&BAR。駆けつけ1ショットのテキーラから始まり、杯を増すごとに濃度上昇の対談をお楽しみください。

「D.Oのホスト力」

D.O (派手に遅刻しながらも一切気にすることなくハイテンションで登場。永野と握手しながら)次なんか堅い仕事あるんですか?

永野 堅くはないのが夕方5時半からあるんですけど、もういっちゃいましょうか!

D.O じゃあ出所祝いがてら!

【全員テキーラショットで乾杯】

永野 最近みんなに言われるんですよ、『McGuffin』の対談動画(6月21日に公開された『【永野×D.O】永野が考えるラッパーの在り方、HIPHOPへの憧れと不満をD.Oは受け止めることができるのか!テキーラ片手に業界の異端児が交わる、緊迫の40分!』3週間で37万再生)について。

D.O うれしいですねえ。それ、こちらサイドからもそうです。めっちゃ評判いい!

永野 マジっすか!あの対談のおかげで、イキッてる後輩がナメてこなくなりましたよ。ウチのトップのサンドウィッチマンのことを悪く言うつもりはまったくないけど。

――しょっちゅう悪く言ってますよ!

永野 毒にも薬にもならないって言ってるんですけど。こないだ20代前半の初めて会うようなウチの若手とライブだったとき、えらい緊張してるんですよ。そしたらヒップホップ好きな若い子からすると、『McGuffin』に出る価値みたいなのがすごいらしくて。

D.O 同じくですよ。これはご本人の前じゃ言いにくいですけど、僕の周りでも私の兄ぃのNZA(なぜか最近ウータン・クランのRZAに触発された永野が「俺のことはNZA=ナザと呼べ」と言い出した)さんのことを永野呼ばわりしてるヤツがいたんですよ。

永野 まあ、しょうがないよな。

D.O でも最近、全員「さん」づけで呼んでます。「永野さんのあれさあ」って感じで。

永野 マジで?すげえうれしい!

D.O 永野さんではない、NZAの兄ぃ!

永野 マジで言ってる人いた!レッドブルの動画も最高だった。あれホントに最高!

D.O 『64Bars』っていう動画ですね。

永野 そこで即興のようなことをやっていて、けっこう決め打ちの場合もあるんだけど、D.Oはホントに即興で一発録りで。

D.O 仕込みはみんなやってますね。

永野 でも、D.Oは入ってきたとこからD.Oだったらしくて。たとえば「おはようございます。あ、このテイクが」とかじゃなくて、ずっとこの感じで帰っていったって聞いて。

D.O 「何回録り直してもいい、好きなだけやっていいから」って言われたときに、僕はカチンとくるほうにスイッチが入ってしまって。「え、いままでのラップ全員そんな感じなの?僕は1回だけしかやらないよ。2回やらすつもりなの?じゃあ2回ぶんギャラちょうだいよ」って言って、それで1回バチーンやって終わらしたんですけど。ということは、実はそこまでにものすごく仕込んで、あたかも当たり前の顔してそこでできるようにしてるわけですよね。それがエンターテイナーの端くれでも責任持たなきゃいけないところだと僕は思ってて。他のザコはそれやってないから、できないわけですよね。

――でも実際、『THE FIRST TAKE』にしても実はファーストテイクじゃないものが混ざってるらしいとかあるじゃないですか

D.O ね、そういう界隈ですから。本物と偽物なんて、そりゃ見極めるの難しいというか、ごっちゃになってしまってる世界でございますけど、そういうの嫌なんじゃなかったっけ?俺らそういうことに文句を言いながら生きてきたんじゃなかったっけ?と。そこでヒップホップのボケどもがそれやっちゃう、もう本末転倒だ、と。それでNZAの兄ぃにこの話をさせてもらったら、「当たり前だ」と。そんなの芸人の方々からも笑われてしまう、そういうお話なんでございます。

永野 ありがとうございます!最高っすよね、そこをちゃんとやり切ってくれるのが。そっちに甘えちゃうともう終わりですよね。

――2人に謎の信頼関係ができましたね。

D.O ハハハハハハ!気づけば(笑)。

永野 僕、大好きなんで!

D.O いやいや、こちらこそなんですよ。

――永野さん、実はそんなにヒップホップの知識は持ってないわけじゃないですか。

永野 ないんですけど気持ちだけで、自分のこと中流階級の悪魔って言ってます。出自こそ中流階級で腹が減った夜こそないけど。

――それでも感覚的には近いんですね。

永野 やっぱりD.OはTwitterとかも言葉がおもしろいですもん。Twitterでダル絡みしてるヤツとかにも、そいつがバカに見える感じで明るくかわすのがうまいんですよね。

D.O 不良の世界で揉まれてきて、めんどくさい先輩とかかわさなきゃいけないから。

――それで慣れてるんですね。

永野 漢さんとD.Oと水鉄砲かなんか持ってたら警察が来たみたいな動画を観たとき、他の人は緊張感ある顔してるんですけど、D.Oだけなんかうまいんですよ。「すみませーん」とか言って警察も笑っちゃうみたいな。

D.O あれ9年前にこの店(西早稲田の『9SARI CAFE&BAR』)ができたときにおもしろ動画撮ろうぜってやってたら、お年寄りとかしか住んでない場所なんで、間違えて警察を呼んじゃったんですよ、「拳銃を持ってるヤツがいる!」って。水鉄砲なのに。

永野 しかも真っ昼間にね。

D.O いつもここで騒いだりうるさくしてると警察呼ばれちゃうんですよ。直接言ってくれれば謝りに行けるんだけど、すぐ呼んじゃう。直接は注意しづらいみたいで(笑)。でも半端ねえ超活きのいいおじいちゃんいますよ。「オリャーッ」とか言って。最初ヤクザが来て唸ってるのかなと思ったら、明らかにそうじゃないおじいちゃんが漢とRYKEY(DADDY DIRTY)を並べて「おまえらコラー!」って外で言ってて、何この展開と思って見てたんですよ。どっちかというと酔っ払って話が通じなくなってる感じで、おもしろいからどれくらい怒ってるのか聞きたくなっちゃって、漢も笑いこらえながら聞いてて。それで……(以下略)。

永野 リアル『笑ってはいけない』だ!

D.O あんなおもしろいことないじゃないですか、小学校のときに先生が怒ってるうしろでなんかやってるヤツみたいなアレですよ。

永野 刑務所でもそれやってたんですか?

D.O はい、ムショでももちろん。

永野 ホントにやってはいけないところでやってるんですよ、この方。『絶対に笑ってはいけない刑務所』をやってるんですから。

D.O そうだ思い出した!(ここから物騒なエピソードを語り続けるが事情により省略)

永野 怖っ! これいい話みたいにしてますけど、たぶん大っ嫌いになる人いますよ! ションベンちびるわマジで。そういえば、この前の対談動画は自分がワーッとしゃべってる感じになってましたけど。あれ全然違うんすよ。コメントも「D.Oのホスト力」とか書き込まれてたけど、ズルいんすよ!俺が酔っ払って、大人のD.Oみたいになって、D.Oはもっと話してたのに冷静に司ってる感じに編集されてて。D.Oの評価が上がる上がる!

D.O ハハハハハハ!おかげさまで。

――ボクがあの動画で一番ドキドキしたのは、永野さんがD.Oさんを評価するときブラザー・コーンさんを引き合いに出したことで。

D.O 何人かにはもう言われてます、それ。

永野 ……すみません、釈明していいですか? 僕まったく知らなくて。そしたら豪さんがTwitterでそんなこと書いてて、「え、何言ってんのこれ?」と思って、ネットで調べて真っ青になりました。俺とんでもないとこぶっ込んでんじゃんって。あれ見たらD.Oのコメントがすごい大人だったんですよ。

――ちゃんとその発言に受身を取ってて。

永野 そう! コーンさんめちゃくちゃ感じよかったんですよ。D.Oぐらい感じよくて。

D.O ご本人だってそんなの絶対わかってくれますから問題ないですよ、レジェンドでございますから(以下、諸事情により省略)。

取材・文/吉田豪

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永野|1974年宮崎県出身。お笑い芸人。グレープカンパニー所属。「孤高のカルト芸人」と称され、地下(本人曰く、地底)で活動するも、「ラッセン」のネタでブレイク。著作に『僕はロックなんか聴いてきた ~ゴッホより普通にニルヴァーナが好き! ~』、『オルタナティブ』(ともにリットーミュージック)がある。

D.O|1978年東京都練馬区出身。ラッパー。雷家族でのサイドMCを経て、06年に初ソロ・アルバム『JUST HUSTLIN’ NOW』をリリース。07年には『リンカーン』に出演し、お茶の間に強烈なヒップホップ体験を提供した。著書に『悪党の詩 D.O自伝』、『JUST PRISON NOW~D.O獄中記~』(ともに彩図社)がある。

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