『玉袋筋太郎の闘魂伝承座談会』よりアントニオ猪木のインタビューを先行配信!

『玉袋筋太郎の闘魂伝承座談会』より

『玉袋筋太郎の闘魂伝承座談会』が12月15日(金)に発売決定。アントニオ猪木のインタビューより一部をお届けします(※記事は2020年3月収録の内容です)。

「ダイヤモンド・プリンセス号に行ってやろうかと思ったんだけど、みんなに猛反対を受けてね。俺はすぐ動いちゃうからさ」(猪木)

堀江ガンツ(以下、ガンツ) というわけで今回のゲストは、“燃える闘魂”アントニオ猪木さんです!
玉袋筋太郎(以下、玉袋) 会長! 本日はお世話になります! また先日は喜寿おめでとうございました!
アントニオ猪木(以下、猪木) ムフフフ。今日はなんの話なの?
ガンツ じつはこの企画では、ボクらが子どもの頃から憧れている方々にレスラー人生を振り返っていただくインタビューをやっておりまして。『KAMINOGE』という雑誌が100号を迎えた記念として、猪木さんにご登場いただいた次第です。
玉袋 ボクはいま53歳になるんですけど、ガキの頃からずっと追いかけさせていただいていて。そんな存在は猪木さんだけなんですよ! 本当にありがとうございます。
猪木 いやいや(笑)。
椎名基樹(以下、椎名) ボクらは何か苦しいことがあったら、猪木さんの言葉を思い出して、毎回なんとか乗り越えようとしてますから。
玉袋 猪木さんの歴史には大変な逆境が何度もあって、「その猪木さんの逆境に比べたら俺なんてどうってことねえ。ちっぽけなもんだ」と、そういうふうに物の考え方をさせてもらってます。
椎名 『燃えよ闘魂 アントニオ猪木・自伝』の「えい、行くぞ! 開き直るのが自慢ではないが私の精神力の強さだと思う」っていうのをボクは遅刻のたびにいつも思い出させていただきました(笑)。
ガンツ 自分の中にある猪木イズムの一例がそれですか!(笑)。
椎名 怒られるの怖いけど、「行くしかない!」って(笑)。
玉袋 猪木さんのレスラー人生もそういったことの連続ですか?
猪木 なんだかわかんないけど、必死になってがんばって生きてきたから。そういう姿を見て、何かを感じ取ってくれた人たちがいるのかもしれないけれど、自分としては無我夢中で走り続けてきただけというね。
玉袋 そういう猪木さんの姿にボクらは勝手に元気をもらってたんですよ。だから先日、長州さんが「猪木さんが国民栄誉賞にならないのはおかしい」って言ってたんですけど。
猪木 そういうものにはまったく興味がないんだよ。
玉袋 ですよね! だからボクたちも国民栄誉賞じゃ小せえと。猪木さんの場合は地球規模なんだから、国民栄誉賞なんかじゃ収まらないスケールなんだって思ってるんですよ。
猪木 とにかく勲章はいらない。もらってもしょうがねえよ、そんなもん(笑)。
ガンツ いまさらだし、猪木さんは常に現在進行形で未来を見ていますもんね。
玉袋 そういう意味で、猪木さんは以前から「世の中が乱れ、混乱したときこそ俺の出番!」って言われてますけど。どうですか、いま世界が新型コロナウイルスで非常事態ですけど。
猪木 あのクルーズ船(ダイヤモンド・プリンセス号)で、いま何が起こっていて、何が必要なのかっていうのがありながら、誰も動く人間がいない。じゃあ、景気づけに俺が行ってやろうかと思ったんだけど、みんなに猛反対を受けてね(笑)。
ガンツ ダイヤモンド・プリンセス号に乗り込もうとしていましたか(笑)。
猪木 俺の場合、思いつくとすぐ動いちゃうからさ。昔からイラク(人質解放)にしても何にしても、思いついたらもうそこにいたというね。
玉袋 その行動力が凄い! そこらのビジネス本の「すぐやる人」どころじゃないというね。
猪木 それにみんな言わないけど、俺も昔45日間の船旅をしたからね。
椎名 家族でブラジルに移住したときですよね。
猪木 そのときは船倉といって荷物を置くところが寝床になってるんだよ。船はこう揺れるんだよね。そうしたらみんなもうゲェゲェ始めるし。いまの人たちは豪華船だから船自体は快適だろうけど、そこに閉じ込められるのは大変だろうと思ってね。
椎名 それを思い出したんですね。「船酔いには逃げ場がない」って『猪木寛至自伝』にも書いてありましたもん。
猪木 俺は若かったからある程度は平気だったけど、やっぱりおふくろとか歳のいった人たちにはキツかったんじゃないですかね。ちょっと海が荒れちゃうとね。だって1万トンもないくらいの船ですから。
ガンツ 出港するときに紙テープが届くくらいですもんね。
玉袋 サントス丸はいま思うと小さかったんだ。それで赤道を越えて、地球の裏側のブラジルまで行くわけですもんね。
猪木 でも、けっこうそれなりに楽しんで過ごしたのかなと思ってね。ほかの船と出会うことってあんまりないんだけど、たまーに沖合で「うわっ、船が通った!」って見えるとそれだけでうれしかったり。あとはトビウオが甲板にバンバン上がってきたり、イルカが追っかけてきたりとかもあってね。
ガンツ 60年以上前ですから、そんな光景はテレビでも観てないわけですもんね。
猪木 テレビ自体がないんだから(笑)。見るものすべてが初めてだからね。

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「なんで早く映像化してくれないんだ。アリ戦だけでも映画になるし、中学の途中でブラジルに渡るってだけで映画だもん」(玉袋)

玉袋 ただ、その航海の途中、お祖父様が船の中で亡くなられたっていう悲しいこともあったんですよね。
猪木 ちょうどパナマ運河を越えていくときに水路が狭いんですよ。手を伸ばせば届くっていうわけじゃないけど、両脇がジャングルで、工事で亡くなった人たちの墓標がずらっと建っていてね。
椎名 運河工事で亡くなった方々のお墓ですか。
猪木 そうなんです。で、おじいさんはそれまで元気だったんだけど、パナマの逆側のクリストバルっていうところで、バナナが1本100円とか200円ぐらいした時代に、こんなでっかい房が1ドルで買えたんですよ。
ガンツ 日本ではバナナが高級品だった時代に。
猪木 それを抱えて船で食ったのがもとで死んじゃうんですけど。
椎名 バナナは青いままだと毒があるって言われてますもんね。
猪木 そのときの場面場面がね、自分の頭の中の映像としていまだに残っている。船が東に向かって、クリストバルを出てから3日目かな。急変して、腸閉塞を起こしたのがもとで死ぬんですけどね。乗船者が500人くらいかな。みんなで送ってくれて、棺桶に鉛を入れるんですよ。それをクレーンで吊って、船長の合図で海に沈めて黙祷をしてね。結局、「人の死っていうのはこんなにあっけないものなのか」っていうのを初めて感じたのがあのときで。西日を背に悲しみの涙を流したっていうのも、それが最初ですかね。
ガンツ そのときの思いや光景が、いまだに鮮明に残ってるんですね。
猪木 これが俺の人生のなかでひとつの大きな出来事で。ほかにも娘を亡くしたり、あるいはこないだ女房(田鶴子夫人)が亡くなり、それぞれの死があるんですけどね。俺の場合は、あの船の上での経験があるから、死に対する考え方っていうのがほかの人たちとはちょっと違うのかなって。だから「花に嵐のたとえもあるぞ、さよならだけが人生だ」っていうね。話がそれちゃったけどいいですか?
玉袋 いやもう、最高です!
猪木 これは何回もしゃべってるから、同じことをしゃべるのも照れくさいんだけど。やっぱりおじいさんが自分の死をもって俺に何かを残してくれたというか。ハッキリと「こうだ」と言ったわけじゃないんだけど、「夢を持て」とか「乞食でも世界一になれ」とか、ひとつひとつの言葉が人生を歩むためのひとつの道しるべというかね。これまで人生を歩んできた基本がそこにあるのかなって。
椎名 闘魂の根本になっているってことですね。
玉袋 凄い体験だもん。普通はできないよ、そんな体験。だから猪木さんを映画化するとしたら、第一作はそこで終わりだから(笑)。
椎名 猪木さんの伝記映画は昔から観たいと思っているんですよ。
玉袋 俺もなんで早く映像化してくれないんだっていう。モハメド・アリ戦だけでも映画になるし、中学の途中でブラジルに渡るってだけでもう映画だもん。
猪木 今度また、旅をしようと思っていてね。昔まわったところをもう1回まわってみたいなって、いろいろ考えていたんだけど。去年は体調も悪かったけど、やっと元気になってきたんでね。
ガンツ やっぱり、“闘う旅人”アントニオ猪木ですもんね。
猪木 だからもう一度、パナマ運河を船で渡るのもいいかなって。ただ、40日も50日も船旅をするのはもう無理だから、メキシコからでもいいからパナマに行ってね。
玉袋 おじいさんの思い出の旅をするわけですね。
猪木 当時のパナマはジャングルでヘビがとぐろを巻いていたり、ワニが甲羅干ししていたりしてね。そういう光景も、いまはテレビで紹介されるから当たり前になっちゃったけど、当時は見るものすべてが初めてのことばかりだからね。
ガンツ いまに置き換えれば、宇宙旅行に行くようなもんなんでしょうね。
猪木 だから、そういう旅をもう1回ね。いまはたいした時間じゃないから。運河を越えて向こうの港に着いて、ベネズエラまで行くという。ベネズエラはちょっと治安が悪いからどうなるかわからないけど、そういう旅をいま計画中なんですよ。
玉袋 いいですね~。
ガンツ 猪木さんの思い出をめぐる旅なんて、猪木信者はみんなついて行きたがると思いますけど。昔の「闘魂猪木塾」みたいにファンもついていくってことはできるんですか?(笑)。
猪木 ムフフフ。いいですよ(笑)。
ガンツ それは最高ですね!(笑)。
椎名 昔、パラオのツアーで「猪木さんが選んだ好物が詰まったお弁当が出る」っていうのを見て、「行きたかったなあ」って思いました(笑)。
猪木 パラオにはこないだ行ってきましたよ。
玉袋 そうなんですか! ボクも以前、テレビのロケでパラオの島で撮影していたら、たまたま向かいにある島がイノキアイランドだったんですよ。「うわー、ここだー!」って。あれはパラオの偉い人に博多人形を贈ったら、お返しに島をもらったっていう話を聞いたんですけど、本当なんですか?(笑)。
猪木 そんなことじゃないけど(笑)。たしかあれはアリ戦のあとですかね。
椎名 そんな昔だったんですか。
猪木 みなさんが日の丸を振って迎えてくれてね。要はパラオというのは戦前は日本に統治されていたわけだけど、戦後になって日本からすっかり忘れられてしまった。そのなかでふたたび日本とつながりを持とうというときに、パラオにおける日本のスターというのが美空ひばりさんと私だったという。それで私は二つ返事でオッケーだったんで行くことになったんですけど、「我々は貧乏でプレゼントは何もできないけど、島はいっぱいあるから選んでくれ」って言われたんで、選んだのがイノキアイランドなんですけどね。
椎名 もはや神話のような話ですね(笑)。
猪木 パラオもだいぶ景色が変わっちゃったけどね。当時はあの美しい海の中にサンゴの林がぶわーっと広がっていてね。それがいまはみんな倒れちゃってる。やっぱり、そういう状況を見ているから、その頃から自然環境なんかも考えてね。
ガンツ すべて自分の目で見たことが出発点なんですね。
猪木 それでサンゴを植えて見事に繁殖したところもありますよ。でも俺らが植えたくらいの数ではたかが知れてますからね。まあ、そういう金儲けにならないことばっかりやってきて(笑)。
ガンツ 猪木さんが早くからエネルギー問題に関わっていたのも、ブラジルでの経験が関係していたりするんですか?
猪木 それはだいぶあとですけどね。ブラジルに移民で行ったときはそんなことを思っていませんよ。生きることが精一杯だったんで。コーヒー豆を作って、指がささくれになってね。
椎名 手袋がなくて素手で収穫していたんですよね?
猪木 いまはうまく収穫する方法があるんだけど、昔は手でしごいて落としていたから。

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