すべての球団は消耗品である「#13 1988年の村山阪神編」byプロ野球死亡遊戯

すべての球団は消耗品であるbyプロ野球死亡遊戯「1988年の村山阪神」
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勝っても、負けても、いつの時代もプロ野球球団はファンに猛スピードで消費されていく。黄金時代、暗黒期、泥沼から抜け出せない低迷期。ファンは、そして僕たちはいい時も悪いときもそんな刹那の瞬間に快楽を求めているのかもしれない。

みなぎる村山と戦慄の選手たち

千昌夫25億円、松坂慶子10億円、十朱幸代8億円、原辰徳4億円……。

これは『週刊ポスト』1988年1月1日号の「お正月だもン景気よく行こうぜ! 88年角界有名人できたてのホヤホヤ豪邸総まくり!」特集のマイホーム推定金額だ。

100万円の元手を1億円に増やすファミコンソフト『松本亨の株式必勝学』が発売される財テクブーム真っ只中で、「静かな環境でいいですよ。40坪の庭に甲子園の芝を敷きました」とコメントをするのが、阪神間の夜景を一望できるサウナ付き6DK、1億5000万円の豪邸に住む岡田彰布である。

もうゲイバーのホステスとの密会を写真週刊誌に激写されて「ホンマにキレイかったで」とか訳の分からない弁明をした頃のオレやない。当時30歳、85年に21年ぶりの日本一で虎フィーバーをもたらしたが、前年の87年には早くも球団創設以来ワーストの勝率.331、首位巨人と37.5ゲーム差をつけられてのダントツ最下位に沈み、88年は通算222勝右腕の“ミスタータイガース”村山実新監督を迎えての捲土重来のシーズンに……ならなかった。ゴメン、最初に思わずネタバレかましちゃうぐらい、ボロ負けのアレだった。

大阪の町工場経営者の岡田父が阪神のタニマチ的な存在で、少年時代の彰布がキャッチボール相手を務めたのが引退試合を控えた村山だった……なんて小ネタも虚しく響く惨敗だ。宴会コンパニオン出前サービスは5000円の別料金で裸になる「野球拳セット」が大人気という好景気の浮かれた世の中で、1秒も浮上できなかった村山阪神を襲った冗談みたいな悲劇の数々。この物語はフィクションではなく、実際にプロ野球界で起こった真実のズンドコストーリーである。

「今年、成績が悪かったら、責任を取るのは選手の方。オレはクビにならん。クビになるのは選手や!」

念のため断っておくと、この村山監督の阪神球団88年御用始めでの挨拶もギャグではなくガチである。こんなボスのもとで絶対働きたくねぇ……と戦慄させる熱血指揮官の脅迫に対して、岡崎球団社長も「監督のいう通り、去年の契約交渉でも何人かには“今年ダメだったら……”といってある」と援護射撃。

その一方でフロントは村山が希望した田淵幸一や江夏豊ら夢のコーチ組閣をことごとく却下して、将来の監督就任が既定路線だった早大出身の中村勝広二軍監督を一軍コーチ枠にゴリ押し介入。真っ直ぐな村山はカッとなり、自ら江夏と交渉するために準備していた新幹線のチケットを破り捨てたという。自身の経営するスポーツ用品販売会社よりも、愛するタイガース復権のために身を投じたが、しょせん中村までの“繋ぎの監督”でしかなかったのだ。

なにより、16年ぶりに復帰した阪神は戦う集団とは程遠く、村山はキャンプイン後はコーチ陣に向かって、「選手を叱るときは、その場でビシッと叱れ!」なんてブチギレ、野次を飛ばした見学のファンに食ってかかり、連係プレーでミスを繰り返す外野陣に集合をかけて「しっかり、カットマンへ返さんかい!」なんて炎のダメ出し。期待の若手サウスポー仲田幸司が右太ももを痛めると有無をいわさず外出禁止令のカミナリだ。オープン戦初戦の2月28日阪急戦はあっさり完封負けを喫し、翌1日の練習では選手たちに罰走を命じるも、最強助っ人のランディ・バースは、のちに書籍化される『バースの日記』にこう書き記している。

「監督の罰則で長いランニングとなったが、ハードなランニングをしたからといって、われわれが上達するというのか。まったく、バカな話である」

追い打ちをかけるように、その10日後には球団通訳の結婚式で、「私が28歳くらいの全盛期には、いつも王選手を三振に切って取ったものです」なんて己のエース時代を懐かしむ村山監督の祝辞に対しても心底呆れてみせる。

「まったく場違いな、バカなスピーチだった。見下げ果てたヤツだ。こんな場でbragして(威張って)どうなる」

ちなみにこの年のバースは年明けの1月12日にようやく正式契約を交わし、マウイ自主トレ中に息子が発熱したこともあり、キャンプ終盤の2月20日からチームに合流して練習を開始。つまり、大黒柱の主砲が新しいボスと出会ってわずか3週間ほどで、「とんでもないバカ」と見切る異常事態なわけだが、村山監督はダメ虎再建に向けて、門限破りには去年の3万円を大きく上回る10万円の高額罰金を科すことを決めたのであった。

自爆テロのような采配の数々でチームは疲弊し、オープン戦は当然のように3勝10敗3分けの最下位。これじゃアカンと85年V戦士からの世代交代を目指して、大野久、和田豊、中野佐資の若手野手トリオを“少年隊”と名付け、ベテラン野手陣の嫉妬と反発を受けながらも村山自ら打撃投手を務めて売り出した。なお、東山……じゃなくて、和田が伝説の「おはよ~!チュッ(笑)」メールスキャンダルで世間を騒がすのは約25年後のことである。

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中溝 康隆なかみぞ やすたか(プロ野球死亡遊戯)|1979年、埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。ライター兼デザイナー。2010年10月より開設したブログ『プロ野球死亡遊戯』は現役選手の間でも話題に。『文春野球コラムペナントレース2017』では巨人担当として初代日本一に輝いた。ベストコラム集『プロ野球死亡遊戯』(文春文庫)、『原辰徳に憧れて-ビッグベイビーズのタツノリ30年愛-』(白夜書房)など著書多数。『プロ野球新世紀末ブルース 平成プロ野球死亡遊戯』(ちくま文庫)が発売中。

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